臨床工学技士とは?
臨床工学技士とは、1987年に制定された『臨床工学技士法』に基づく医学と工学の両面を兼ね備えた国家資格であり、現代医療に不可欠な医療機器のスペシャリストです。医師や看護師、各種医療従事者と共に患者さんへ医療機器の安全確保と有効性維持の担い手としてチーム医療に貢献しております。臨床工学室の概要と特色
現在、臨床工学技士が15名(男性12名、女性3名)在籍しています。当院の特色としては、道東ドクターヘリ受け入れも行う三次救急医療を提供しており、365日24時間臨時対応を行っております。臨床工学室としてME機器管理室業務、血液浄化業務、循環器業務、集中治療室業務、手術室業務、内視鏡業務、人工呼吸器業務、高圧酸素治療業務など幅広く業務展開を行っております。業務紹介
ME機器管理室業務
当院のME機器管理室業務は、貸出・返却・点検などの一連の業務を中央管理しており、医療機器の管理体制や安全なME機器の運用を行っております。貸出機器に関わらず、他部署に配置している機器トラブル対応やラウンド業務による点検など、保守管理を行う事で、安定した医療提供を心掛けております。また、院内の新人研修や新規導入機器など、医療機器取り扱いに関する勉強会も行っております。血液浄化業務
人工透析室には臨床工学室より4名が配置しており、透析治療のための準備、透析装置の保守点検、透析液の水質管理を実施しております。透析用監視装置34台(個室対応1台)、単身用透析装置2台の計36台で透析治療を提供しており、オンラインプライミングを行い、オンラインHDFの治療を提供しております。血液透析以外の治療を実施する血液浄化は、白血球除去療法、腹水濾過濃縮再静注法。また、近年はABO不適合移植に対しての血漿交換、二重濾過血漿交換も行っております。
循環器業務
人工心肺業務
当院の人工心肺業務には3名の臨床工学技士が担当します。人工心肺とは、言葉のとおり、心臓と肺の代わりを人工的に行うことです。心臓を止める手術の場合、体に血液が流れない事になるので、その代替となる装置が必要です。この装置は、体の血液を引っ張り、それに酸素を与えて、ポンプにて身体に返します。これで身体の循環をしてあげ、「心臓」の役目をします。そして、その回路の途中には人工肺と言うものがあり、そこを通ると、血液に酸素が行き渡ります。これが「肺」の役割を果たします。この両方の役割を行う為、「人工心肺装置」と言われます。人工心肺が動いている間、患者さんの血流の状態は、ほぼ臨床工学技士がにぎっています。人工心肺業務は、心臓手術の際、血液循環と血液の酸素化と言う大きな仕事を担い安全に心がけた業務を行っております。心臓カテーテル/ペースメーカ埋込業務
当院のカテーテル業務は、カテーテル検査や治療時の物出しやFFR( 冠血流予備量比 )、EPS装置、IVUS( 血管内超音波装置 )、OFDI( 光断層像診断装置 )、ELCA(エキシマレーザー)、ロータブレータなど医療機器の操作などを行い、安全に医療を提供できるよう医師や各種コメディカルとコミュニケーションをとり、チーム医療の基に業務を行っております。また、その他にも、EVT( 抹消血管インターベンション)、VAIVT( バスキュラーアクセスインターベンション)も行っております。ペースメーカ業務では、植込み/交換時などメーカー立ち合いのもと周辺機器の立ち上げや、プログラマー操作など行い、その他、緊急時のチェックなど遠隔モニタリングを含めたペースメーカ管理をCE4名にて行っております。救急治療/集中治療室業務
集中治療領域における当院の臨床工学技士の仕事は、補助循環業務と急性血液浄化業務が主体です。補助循環として、IABPとPCPSにおける導入から維持管理に至り、PCPS施行時には救急救命センターにおいて臨床工学技士が24時間臨時対応しております。急性血液浄化分野はCRRTが大半ですが、PMX-DHP・PE等のアフェレシス治療も実施しております。
手術室業務
日々進歩を続け多様に高度化される医療機器へ対応するため、当院では手術室において臨床工学技士が管理・助手操作を行っております。医師の指示のもと、機器の準備や操作を行っている手術としては、泌尿器科 / 心臓血管外科 / 整形外科 / 眼科領域であり、今後も更なる業務拡大が考えられます。また、オペ室内の医療機器を把握し、トラブルなどに対応することで安全かつ質の高い医療の提供を行っております。
各科臨床工学技士による業務内容について
泌尿器科/外科
- 手術支援ロボット「da vinci」の点検、準備
- 尿路結石砕石術のレーザーの準備、操作
心臓血管外科
- ラジオ波焼灼装置の準備、操作
整形外科/心臓血管外科
- 自己血回収装置の準備、操作
眼科
- 眼科手術装置の準備、操作
泌尿器科
心臓血管外科
眼科
人工呼吸器業務
人工呼吸器業務ではICUやNICU等で使用される人工呼吸器・NPPV・ネーザルハイフロー(高流量デバイス)を扱っております。臨床工学技士は回路組みや始業点検・定期点検を行い、長期使用している患者さんの人工呼吸器の回路交換も行っております。また、人工呼吸器を安全に使用するために毎日病棟ラウンドを行い、使用環境や機器の設定内容などの確認など行っております。その他にも毎年看護師を対象とした人工呼吸器の講習を開催しております。
消化器RFA(ラジオ波焼灼療法)/内視鏡業務
消化器RFA業務は、肝臓にできた悪性腫瘍において、エコー下に経皮的に穿刺を行い、ラジオ波にて、腫瘍を壊死させる治療となります。当院では、OLYMPUS社製CelonPOWER・ COVIDEN社製 Cool-tipシステムを使用しており、医者の指示の下、安全に治療を施行出来るよう臨床工学技士が機器の操作、記録、点検などを行っております。内視鏡業務においては、2014年度より業務を開始し、消化器内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・麻酔科・泌尿器科・放射線治療科における軟性内視鏡の管理・保守点検を行っております。また、軟性内視鏡とともに各システムや付属機器、内視鏡洗浄機の管理・保守点検も行っております。また、2015年度より消化器科内視鏡の培養検査を開始し、2016年度より院内全内視鏡の培養検査をICT委員会(感染対策委員会)・検査科と連携し行っております。
高圧酸素治療業務
当院の高気圧酸素治療は、担当医の指示の下、臨床工学技士が担当しています。高気圧酸素治療は、大気圧より高い気圧環境の中で、酸素を吸入することにより病態の改善を図ろうとする治療です。体内酸素量の増加、生体内にできた気体を圧縮・再溶解、酸素による細菌の抗菌効果があります。特殊な環境下での治療となるため、安全に治療がおこなえるよう点検(始業点検・使用中点検・終業点検)も臨床工学技士が行っております。関連資格/学会等
関連資格 | |
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3学会合同呼吸療法認定士 | 3名 |
透析技術認定士 | 6名 |
体外循環技術認定士 | 3名 |
第2種 ME技術実力検定 | 5名 |
高気圧治療専門技師 | 1名 |
臨床ME専門認定師 | 1名 |
認定血液浄化臨床工学技士 | 1名 |
手術関連専門臨床工学技士 | 2名 |
周術期管理チーム認定臨床工学技士 | 1名 |
日本DMAT隊員 | 1名 |
所属学会 | |
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日本臨床工学技士会 | 北海道臨床工学技士会 |
日本人工臓器学会 | 日本体外循環技術医学会 |
日本急性血液浄化学会 | 日本高気圧環境・潜水医学会 |
日本血管インターベンション学会 | 日本手術医学会 |
日本集中治療医学会 | 北海道消化器内視鏡技士会 |